地元にUターンして東京の仕事をフルリモートで続けることの是非|転職相談Q&A

日ごろ転職相談でお寄せいただく質問にリージョンズのコンサルタントがお答えします。今回は「地元に転居し、東京の仕事をフルリモートで続けることについてアドバイスがほしい」というご相談です。

※個人情報保護のため質問内容は一部加工しています。

現在、東京都で一人暮らしをしています。実家が北海道札幌市にあり、一人っ子なので、以前から「いつかは地元に戻らなければ」と思っていました。最近は直接的には言われないものの、両親も私がUターンして戻ってくることを期待しているように感じています。ただ、いまのコンサルティングファームでの仕事はとても面白く、待遇面も捨てがたいです。
会社の親しい上司に少し相談したところ、もし札幌に戻るのであればフルリモートでの勤務もできるのではと提案してくれました。ただこれから先のキャリアをずっとフルリモートで働くことには不安も感じています。
札幌にUターンして住まいを移し、東京の仕事をフルリモートで続けることについて、アドバイスがあればお願いします。
(A氏・32歳・女性・大学卒・コンサルタント)

フルリモートを検討する上で確認したいポイント

ご相談ありがとうございます。

いま東京のコンサルティングファームでの仕事は面白く、待遇も満足されているなかで、札幌へのUターンを検討されていらっしゃるのですね。また上司からフルリモートの提案も受け、いまの仕事を継続しながら、札幌へUターンできる可能性もあるとのこと。

しかしこれから先、ずっとフルリモートでの勤務を続けることには不安も感じますよね。今回はフルリモートで起こりえるリスクも理解した上で、Aさんが後悔することなく判断できるよう、お答えしていきたいと思います。

ポイント① フルリモートは制度として確立しているか

コロナで急速に普及した新しい制度

リモート勤務は2020年からのコロナ禍により急速に普及した制度です。それ以前から在宅勤務やテレワーク等の名称で、自宅で仕事をする人はいましたが、正社員として雇用されている人は少数で、主にITエンジニアやWebデザイナーといった職種に限定されている印象でした。しかし、いまでは企業規模や業種、エリアによって異なるものの、幅広い職種でリモート勤務が広まっています。

参考:総務省 テレワークの実況調査

定着しつつあるリモート勤務ではありますが、本格的に普及してからまだ2年ほどしか経っていません。まだリモート勤務の良し悪しについては検証段階と言えるでしょう。

2022年5月には、自動車メーカーのホンダについて「在宅勤務は必要に応じて活用するものの、国内全部署で原則出社」というニュースが報道されました。ワクチン接種が進み、コロナの感染拡大も落ち着いてきたことを背景に、社内コミュニケーションを活性化することが狙いのようです。今後はホンダと同じく原則出社に戻す企業が増えても不思議ではありません。

就業規則に明記されているか確認を

コロナ禍でリモート勤務が実質的に認められたことで普及しましたが、それが就業規則に明記されているかは確認しておくべきです。単純な話ですが、就業規則にリモート勤務が明記されていない場合、会社から「出社しなさい」と言われれば、当然ながら出社の義務が生じます。一方で就業規則にリモート勤務が明記されていれば、もしそれを変更する場合には、従業員の過半数の代表者から意見を聴取する、労働基準監督署に届け出るといったプロセスを踏む必要があり、変更は容易ではありません。今後、出社ができないエリアに転居する場合には、リモート勤務が就業規則に明記されていることは最低限の条件と言えるでしょう。

ポイント② 昇進・昇格や評価に影響するか

正当に評価を受けられるか

リモート勤務が認められているとしても、正当に評価を受けられるかは、まだこれから検証が必要です。なおこれと類似する議論として、転勤がある総合職と、転勤がないエリア限定職を選べる会社での給与設定があります。この場合は、エリア限定職の給与水準を低く設定していることが多いです。フルリモートで出社ができないとなると、将来的にはこれと同じように給与にも影響を及ぼす可能性はあると思っておいた方が良いでしょう。

クライアントワークできないことがどう判断されるか

コロナ前まではオフィスにいることよりも、クライアント先で仕事をすることの方が多かったのではないでしょうか。以前に比べてクライアントワークの機会は大きく減っていると思いますが、コンサルタントとして、実際に現場に足を運んで課題や問題点を把握することは非常に重要です。リサーチや資料作成といった業務であればリモートワークで問題なく完結できますが、どうしても現場に行かないと分からないこともあるはずです。(それなりの頻度で)出張が可能であれば問題にならないかもしれませんが、そうでない場合は担当できる業務に制限が生じてしまい、それが評価にも影響する可能性はあります。

ポイント③ 自分が理想とする働き方と合致しているか

フルリモートはジョブ型に適した制度

フルリモートでの仕事は、業務範囲が明確で、成果で評価されるジョブ型に適した制度と言えるでしょう。ジョブ型が良いか、メンバーシップ型が良いかは人によって好みが分かれるところです。実際、フルリモートの場合、ジョブローテーションや年功序列型の給与体系といったメンバーシップ型の働き方をすることは難しいでしょう。

社員(仲間)との一体感は得られにくく、人によって向き不向きがある

このコロナ禍ですでにリモートワークは経験されていると思いますが、リモートワークはそもそも人によって向き不向きがあります。自宅で一人仕事をしていると、どうしても社員とのコミュニケーションの機会は減ってしまいます。何気ない雑談の延長線上で、良いアイディアが得られるといったことも、リモートワークでは限定的になります。また、人は何かしらの組織に帰属することで安心するものですが、リモートワークではその帰属意識、仲間との一体感が得られにくいと言えます。

ポイント④ 中長期的な不測のリスクを想定しておく

いまはフルリモートで良いが、10年~20年後にどうなるかは誰も分からない

すでにお伝えした通り、リモートワークはコロナ禍で急激に広まった制度です。きっかけはコロナではありますが、リモートワークが定着しつつあり、結果的に一人ひとりの都合や状況に応じた働き方の選択肢が広がることとなりました。しかしまだ検証段階であり、10年~20年後にどうなるかは誰も分かりません。特にこれから、リモートワークを継続したことで、生産性が落ちた、セキュリティの不安が広がった、社員の成長が遅くなった、社内のコミュニケーションに支障が出た、といった事例が増えていくと、リモートワークの制度自体の見直しがあるかもしれません。

会社も個人も変化していくもの。中長期的にはリスクがある

会社も個人も常に変化していくものです。新しい事業を始めたり、既存事業から撤退したり、M&Aにより資本が変わったり、ということは当たり前に起こり得ます。また個人としても、結婚、子供の誕生、育児、親の介護、老後の生活とライフイベントとともに状況も価値観も変わっていきます。その過程で常に「必要があっても出社できず、リモートワークしか選択肢がない」という状況を自ら作り出すことはリスクになることも理解しておきましょう。


今回は、長期にわたってリモートワークをしていくうえでのキャリア形成について、アドバイスさせていただきました。

以前からリモートワークが定着していた職種は別ですが、そうでない職種の場合は、まだ何が起こるか分かりません。不確定要素が多いなかでキャリア形成を考えるのであれば、選択肢は多く持っておいた方が良いでしょう。現在のコンサルタントの仕事はやりがいもあり待遇も良いとのことですので、それをフルリモートで続けることは悪い選択肢ではないと思いますが、それに伴うリスクも理解したうえで話を進めることをお勧めします。

今回の回答者:菅原 大(Sugawara Dai)
1987年、宮城県生まれ。東北学院大学経済学部を卒業後、東証一部(現:プライム市場)の専門商社に入社。大手チェーンストア向けに消費財の営業を担当した。2013年に宮城県へのUターンと同時に、リージョンズ株式会社に入社。これまでキャリアコンサルタントとして、500名を超える転職者に対してキャリア支援を行ってきた。
保有資格:国家資格キャリアコンサルタント

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