日ごろ転職相談でお寄せいただく質問にリージョンズのコンサルタントがお答えします。今回は、「勤め先がフルリモートから出社に切り替わったことをきっかけに、地元企業での転職を検討している」というご相談です。
※個人情報保護のため質問内容は一部加工しています。
現在、東京本社の大手日用品メーカーで働いています。コロナウイルスの拡大をきっかけにフルリモート勤務や居住地自由の制度が本格的に導入され、ここ2年は生活基盤を地元の札幌に移して働いていました。
しかし、最近になって、出社を求められる頻度が増え、現在は週に1回ほど自費で東京に出張する生活を送っています。正直、体力的にも経済的にも負担が大きいですし、札幌には両親や結婚を考えているパートナーもいるので、札幌で腰を据えて働ける地元企業への転職を検討しています。
ただ、現在の仕事にはやりがいを感じていて、年収も600万円程度。これまで積み上げてきたキャリアを捨てて転職してよいのか、正直迷っています。
今後のキャリアについてどのように考えるべきか、アドバイスがあればお願いします。
(S氏・32歳・男性・大学卒・事業企画)
自己負担での出社を続けるか、地元企業に転職するか
ご相談ありがとうございます。
フルリモートで勤務をしていたものの、自己負担での出社が増えたことにより、地元企業への転職を検討されているのですね。一方で、今の仕事や待遇面には満足されており、これまで積み上げてきたキャリアを捨てることに迷いもあるとのこと。
今回は、変わりつつあるフルリモート勤務の実態を押さえつつ、今後の生活やキャリアについて、Sさんが納得のいく判断ができるようアドバイスさせていただきます。
リモートワークから出社に切り替える企業が増えている
実際、コロナ禍でリモートワークを実施してきた企業が、オフィス勤務を重視し出社を求めるケースが増えてきました。たとえば、日本企業では早々に、ホンダが原則出社に切り替えたほか、楽天グループも出社日を週3日から週4日に増やしました。
さらに、働き方に柔軟なイメージのある米国でも、2023年2月にアマゾンCEOが同社従業員に週数日のオフィス勤務を命じたというニュースが報じられました。グーグルやアップルも週3日以上のオフィス勤務を求めており、大手テック企業などによるオフライン回帰に向けた動きが目立っています。
参考:ニューズウィーク日本版「アメリカで進むオフィス回帰…アマゾンは週3日以上の出社を義務付けへ」
リモートワークを廃止・縮小している企業の多くは、業務の生産性や教育、社員のコミュニケーションなどにおいて何らかの不具合が発生し、やはり出社が必要という判断に至ったものと思われます。それぞれの企業の業務や文化によって、やはり出社をベースとして直接コミュニケーションを取った方が効率よく、成果も出やすい場合もあるのでしょう。
以前、「地元に転居し、東京の仕事をフルリモートで続けることについてアドバイスがほしい」というご相談を受けた際にも記載しましたが、たとえフルリモートという制度自体が備わっていたとしても、Sさんのように不測の事態によって出社せざるを得なくなってしまうケースは誰にでも起こり得ます。いわば、これまでの揺り戻しのような動きが起こっているわけです。
日ごろ転職相談でお寄せいただく質問にリージョンズのコンサルタントがお答えします。今回は「地元に転居し、東京の仕事をフルリモートで続けることについてアドバイスがほしい」というご相談です。 ※個人情報保護のため質問内容は一部加工していま[…]
実際、フルリモートから出社へ切り替わったことを理由に、転職を検討したいという相談を受けることが多くなりました。
自分が何を実現したいのか整理する―転職の6軸―
さて、上記のような状況のなかで、Sさんは「これまで積み上げてきたキャリアを捨てて転職してよいのか正直迷っている」とのことでした。
確かに悩ましい気持ちはわかりますが、週に1回ほど自己負担で東京へ出社されているというSさんの今の状況は、かなり深刻なものとお見受けします。仮にこの状況が一時的なもので済むのであればこのまま乗り切れるかもしれませんが、半年後、一年後、さらにその先まで続くとなると、もはや地元での生活は現実的ではないでしょう。まずは、上司の方に掛け合って、フルリモートの働き方に戻せないかを相談してみるところからスタートすることをお勧めします。
ただし、一方で、一時的にフルリモートの働き方に戻せたとしても、それがいつまで続くかはわからないことは覚悟しておかなければなりません。
そこでSさんに考えていただきたいのは、これから先の生活・キャリアを想定したときに「本当に実現したいことは何か」ということです。ここでは一般論ではなく、自分自身の価値観を正確に理解することがポイントです。
ちなみに、転職によって改善・実現したいことは、次の6つに大別でき、考え方については下記の記事にて紹介しています。
転職は人生の転機だからこそ、「あれも・これも」と多くを求めたくなるものです。しかし明確な基準を持っていなければ本来の目的を叶えることができず、転職後に「こんなはずではなかった」と後悔するかもしれません。そこで、自分なりの判断基準をつくるた[…]
それぞれについて希望の内容と最低ラインを具体的に考えていきましょう。
- 待遇軸
- 業界・会社軸
- 仕事内容・キャリア構築軸
- 勤務地軸
- 労務環境軸
- 職場環境軸
Sさんの場合、フルリモートで勤務していた時と、出社が求められるようになった今とでは、実現したいことが変わってきているはずです。その点を改めて整理しましょう。
地方への転職はキャリアを捨てることになるのか
勤務地として地元を選ぶのか、今のキャリアを優先させるのか。では、仮に地元企業に転職した場合、キャリアを捨てることになるのかという観点で考えてみましょう。
転職相談で、「これまで積み重ねてきた経験やスキルが地方で活かせるか不安だ」という話はよく聞きます。とくにSさんのように大手企業で事業企画をしてきた方の場合、地元企業でそのまま同じ業種、同じ職種、同じ年収が見込める環境を探しても求人が見つからないケースは多々あります。
ただし、「地元で働く=これまで築いたキャリアを捨てる」と考える必要はありません。現職と同様の仕事ではなくても、経験を活かし、充実感を持って働ける仕事を見つけることは可能です。
大手メーカーから地元企業に転職したAさんの事例
Aさんは大手自動車部品メーカーで海外拠点の立ち上げプロジェクトを任されていましたが、地元の札幌で転職したいという希望を持っていました。 しかし、地方企業では海外拠点の立ち上げをミッションとした求人はなかなか存在しません。 |
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そこで、海外拠点の立ち上げという仕事を紐解いていったところ、複数のプロジェクト管理、M&A先との交渉・調整、メンバーマネジメントなど、さまざまな経験をお持ちでした。 |
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さらに、これらの経験のなかで、何にやりがいを持ち、どんな強みを発揮してきたのかを深堀りしていった結果、「困難なプロジェクトほど挑戦意欲が掻き立てられ、様々な人を巻き込みながら完遂まで持っていくこと」が、Aさんの本質的なスキルであることが分かりました。 |
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そこで、某総合リサイクル企業の社長直下の新規事業企画のポジションをご提案したところ、Aさんも「自分の経験が活かせそうだ」と興味を持ち、選考に進むことになりました。 |
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結果としては、現年収を少し下回りましたが、経営に近いポジションだったこともあり、Aさんの希望年収の範囲内で内定を勝ち取り、無事に地元札幌での転職を実現。 入社後は、前職のプロジェクト管理で培ったスキルや経験を、うまく新規事業企画のミッションにも転用しご活躍されています。 |
このように、地方では、業種や職種は異なったとしても、都会での経験を買われて、幹部社員、経営者候補としてのキャリアを目指せるケースも多々あります。
「地元で働く=これまで築いたキャリアを捨てる」とみなすのではなく、より良いキャリアを築くための選択肢の一つとして、地方を見つめなおすと良いかもしれません。
まとめ
コロナウイルスの収束に伴い、フルリモートを含むリモートワークから出社、あるいはハイブリッドな勤務体制に切り替わってきている企業は少なくありません。とくに、コロナ禍で地方での生活にシフトしていたSさんのような方は、勤務体制の変化に伴って、改めて自分に合った働き方・暮らし方を検討する必要があるでしょう。
大切なことは、今の自分、そしてこれからの自分にとって、何が大事なのかを考え優先順位をつけることです。そして、何かを優先したその先の世界までイメージしてみましょう。たとえば、現職でのキャリアを優先し、東京に戻って生活をした世界。地元での暮らしを優先し、新しい会社で新しいミッションに挑戦する世界。それぞれの世界をイメージしたときに、もし何か違和感があるとすれば、そこにSさんの大切な価値観があるかもしれません。
仮に、地方での暮らしを優先する決断をされた際は、大なり小なりキャリアに不安を感じる方がほとんどです。とはいえ、上記で紹介したように、地方転職で良いキャリアを築くことも十分に期待できます。
北海道・宮城・栃木・茨城でのキャリア形成について、客観的なアドバイスが欲しい人はリージョンズにご相談ください。
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