年収アップは当たり前!? ITエンジニアのUターン転職事情

経済産業省は「2030年にはIT人材が最大で79万人不足する」と発表しました。これを聞くとITエンジニアの需要は高まっており、転職も容易だと思うかもしれません。果たしてそれは事実でしょうか。そして、地方も同じ状況なのでしょうか。今回はITエンジニアのUターン転職について事例をふまえながらお伝えします。

監修:荻野 智史(Ogino Satoshi)
立命館大学卒業後、日立製作所グループのメーカーに入社し人事・労務に従事。2014年に日本キャリア開発協会認定CDA(career development adviser)を取得。同年、妻の地元北海道・札幌へUターン。リージョンズに入社し、コンサルティング業務に従事している。

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身近になったITエンジニアのUターン転職

地方出身者なら、一度はUターン転職について考えたことがあるのではないでしょうか。

Uターン転職のきっかけは様々ですが、私が知るITエンジニアの場合、プロジェクトが変わるたびに転勤があるためそろそろ地元に戻り落ち着いて暮らしたい、地元に交際相手がいるから戻って結婚したい、といった理由が多いように感じます。

移住支援制度の拡充や、コロナ禍がきっかけとなり地方で暮らすことを選択する人も増えています。ITエンジニアの場合、セキュアな環境が担保されれば勤務場所を問わない求人も豊富なため、他の職種と比べるとUターンするためのハードルは低くなったと言えるでしょう。

地方におけるITエンジニアの需要

Uターン転職で気になることの一つが「自分の経験は地元の企業で必要とされるのか」ということですが、その心配はありません。

現代はどんな分野でもITは不可欠なものとなっています。地方の企業にとって、首都圏で経験を積んだITエンジニアは喉から手が出るほど欲しい存在でしょう。

また、それぞれの地方にIT企業の集積地区があります。これは自治体が主導しているものから、国家戦略特区(※)として国をあげて取り組んでいる地域もあります。

※国家戦略特区…国が指定した地域において法律などに風穴を開け規制改革することで、民間事業者がより一層活動しやすくなる取り組み。2022年11月現在、全国で10区域が指定されている。
参考:内閣府国家戦略特区HP
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/shiteikuiki.html

国家戦略特区例①福岡市

福岡市は国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に指定され、官民共働型スタートアップ支援施設を設置するなどしており、とくにテック企業が多いことで知られています。

参考:FUKUOKA GROWTH NEXT
https://growth-next.com/

さらにLINE、メルカリ、サイバーエージェントなどが拠点を開設し、AI・IoTスタートアップ、宇宙ベンチャーなどの次世代研究領域もあります。テクノロジー・クリエイティブ領域の人材移住を支援する取り組みがあるため、地方移住を考えたとき、まずは福岡を検討するITエンジニアは多いでしょう。

国家戦略特区例②仙台市

仙台市も国家戦略特区に指定されています。2022年10月には、Web3.0分野のビジネスにチャレンジしやすい環境を整備するため、新たな規制改革を内閣府へ提案しました。海外に流出している人材を含め国内外の優秀なプレーヤー、とくにITエンジニアを確保しようとしています。

上記のような政令指定都市以外の地方にもITエンジニアは必要不可欠な存在です。スマート農業、マリンITなど一次産業でもIT技術は必要となりますし、製造業や流通小売、サービス業に至るまであらゆる分野において、ITを活用して地方から世界に打って出ようとする企業は増え続けています。首都圏で経験を積み高い視座をもつITエンジニアはどこの地方の企業にとっても歓迎されるでしょう。

UターンITエンジニアのよくある転職パターン

ITエンジニアはこれまでIT業界内の別ポジションに転職するパターンがほとんどでしたが、どの分野でもITが必要とされる昨今は、異業種への転職も増えています。よくあるUターン転職のパターンを3つご紹介します。

地元本社のIT企業にエンジニアとして転職

首都圏のIT企業から地元本社企業のITエンジニアにUターン転職するパターンです。

一昔前は、首都圏水準から地方水準の待遇になるため、Uターンした方の多くは年収が下がっていました。また、プロジェクトの規模感も小さくなることが一般的でした。しかし近年は、地方水準の待遇では優秀な人材は採用できないと考える地方企業が増えつつあるため、Uターン転職でも年収がアップするケースが増えつつあります。

また、リージョンズがUターン転職を支援した中には、東京から自社開発メインの地元SIerに転職し年収は下がったが、毎日定時退社・納期に追われない・クライアントの要望に振り回されないということでストレスが激減し、総合的な幸福度がUPしたという方もいます。Uターンで何をかなえたいのかをよく考えることで、転職先の選択肢も増えるでしょう。

コンサルティングファームに転職

ITエンジニアからITコンサルタントやPMOといった職種にキャリアチェンジするパターンです。この場合は年収がアップする場合も多いです。

ひとくちにコンサルティングファームといっても様々な企業がありますが、IT活用を前提としたコンサルティング事業を行っている企業であれば親和性が高いでしょう。ITエンジニアからコンサルタントを目指す場合、ベースとなる技術的知識は備わっていますが、入社後もかなりの勉強が必要になります。エンジニアの枠を超えてキャリアを築きたいと考える人にはおすすめの転職パターンです。

懸念点は、コンサルティングファームはそれなりの経済圏がある地方にしか存在しないということです。また、コロナ禍以降はフルリモート勤務のITコンサルタント求人も増えていますが、オフィス回帰の流れもあるため、リモート勤務が永続的なものとは限らないということも注意しましょう。いつでも転職できるように自分の市場価値を高め続けることが大切です。

事業会社の社内SEに転職

地元に本社がある企業の場合、本社機能である情報システム部門の求人は選択肢のひとつになるでしょう。情報システム部門といってもキッティングやサポートセンターとしての役割から、専門的な業務知識や開発スキルが求められるものまで求人は様々です。

金融系業務システムの経験があるなら金融機関、製造系ならメーカーなど、自身の経験を活かせる企業の社内SEであれば、入社後の立ち上がりがスムーズかもしれません。Uターン転職で社内SEになる場合、年収は下がる傾向がありましたが、昨今では年収が維持される、あるいはアップする事例が増えています。

社内SEは様々な部署や役職の社員と接点をもつため、職人的な技術力だけでなくコミュニケーション能力も求められます。かつ社内システムに関してオーナーシップをもって推進できる人に向いているでしょう。

地域別に見るITエンジニアの転職事例

地域によってITエンジニアをとりまく市場感は異なるため、自身の地元について情報収集しておきましょう。リージョンズの展開拠点における現状と、実際に支援したITエンジニアの転職事例をご紹介します。

※個人の特定を防ぐために内容を一部加工しています。

北海道

北海道はこれまでニアショア開発の集積地点として認知されており、それが北海道IT産業を支えている面もありました。しかし、コロナ禍を境にIT産業の状況も変わりつつあります。

特徴的なのは、東京から北海道に本社を移転する企業が多いということです。2021年、首都圏から北海道への転入は2019年の約5倍に増えています。

※引用:帝国データバンク 首都圏・本社移転動向調査(2021年)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p220207.html

これは本社機能として位置付けられている情報推進や社内SEの機能も北海道に移るということです。本社機能が北海道に移るにつれて、北海道におけるITエンジニアの活躍の場も増えています。

実際に、関西の大手企業でDX推進の経験を積んだITエンジニアが、地元北海道の企業で新規事業開発のポジションにUターン転職するという事例がありました。この方はUターンと同時に年収アップも実現しています。

宮城

宮城は地元創業の大手製造業が少ない地域でしたが、産業構造転換が図られ、震災を間に挟みながらも先端産業の生産拠点が仙台に集まりつつあります。また盤石な経営基盤をもつ老舗企業も多いため、東北地方出身者のUターンというと仙台への転職が多くなります。

実際の事例では、首都圏で経験を積んだITコンサルの方が、仙台の大手企業の情報戦略担当として年収約100万円アップの転職を実現しています。

栃木

栃木は「ものづくり県」と呼ばれるほど製造業が盛んです。とくに輸送用機械や医療関連の大手メーカーが集積しているため、首都圏にも負けない高待遇な企業が多くあります。

一般的に、大手SIerで経験を積んだITエンジニアが地方中小企業の社内SEに転職する場合、年収が4分の3程度に減ってしまうことも珍しくありません。しかし栃木には大手メーカーの社内SE求人が多いため、地方への転職でも年収を維持またはアップすることも可能です。

実際の事例では、ITプリセールスの経験をもつ方が、大手メーカーの基幹システムの保守担当として年収約100万円アップの転職を実現しています。

茨城

茨城は製造業と学術研究が盛んな地域です。企業誘致によって建設機械メーカーや産業ロボットメーカー、木材メーカーといった幅広い業種のメーカーが茨城に主要生産拠点を置いています。

ITエンジニアが茨城にUターンする場合、栃木と同様に大手メーカーの社内SEポジションに転職することで、仕事も待遇も納得できる転職になるでしょう。

実際の事例では、首都圏で自社システムの開発リーダーを担っていた方が、マネジメント経験を評価され、茨城工場内の情報システム部門管理職として年収約200万円アップの転職を実現しています。

事例をふまえて各地域の特徴をお話ししましたが、どのようなキャリアが考えられるかは人それぞれ異なります。「自分の経験をこの地域で活かすにはどのような選択肢があるか」といった相談は、ぜひ個別キャリア相談会をご活用ください。

まとめ

昨今は地方でもITエンジニアの需要が高く、Uターン転職には良いタイミングです。転職先としてIT業界以外の選択肢もあるため、自分が地元でどんなキャリアを築いていきたいかをよく考えることがUターン転職成功のポイントです。

リージョンズでは、北海道・宮城・栃木・茨城におけるITエンジニアのUターン転職について個別具体的なアドバイスを行っています。地元で自分の経験を活かしたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。

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