退職交渉パーフェクトガイド|去り際こそ肝心!17のQ&Aで不安解消

転職先から内定を得て入社する意思が固まったら、さっそく退職交渉を始めましょう。「立つ鳥跡を濁さず」という言葉もあるように、退職交渉はスムーズに進めたいものです。しかし、最近では予想外のトラブルに発展してしまうケースも散見されます。トラブルを未然に防止するためには、事前に正しい退職交渉の進め方をマスターしておくことが大切です。とはいっても、重要ポイントを押さえておけば、それほど難しいものではありません。

【退職交渉パーフェクトガイド】では、正しい退職交渉の進め方について、STEPに沿って押さえるべきポイントを解説していきます。これを読んで円満退職を目指しましょう。記事後半のQ&Aは、実際によく質問を受ける事項をまとめていますので、あなたにあてはまるものがあるかもしれません。

この記事を監修したコンサルタント

福澤 謙二郎(Fukuzawa Kenjiro)
リージョンズ北海道コンサルタント。2009年入社以来、北海道エリアを中心にキャリアコンサルティングに従事。国家検定2級キャリアコンサルティング技能士、リージョナルスタイル認定チーフコンサルタント。

福澤 謙二郎へのキャリア相談はこちら

退職交渉STEP⓪就業規則の確認

まず退職交渉の前段階、できれば転職活動を開始するタイミングで、現職企業の就業規則はしっかりと確認しておきましょう。退職交渉でとくに重要な部分は、退職に関する事項です。民法上では2週間前に退職の申し出をすればよいことになっていますが、一般的には就業規則で1ヶ月前に申し出をすることを明記している会社が多いです。転職活動中に面接でも「いつから就業できますか(いつ入社できますか)」という質問を受けることもありますので、事前に確認しておく方が無難でしょう。

民法627条1項「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」

退職交渉STEP①入社日の合意

退職交渉に入る前に、必ず転職先企業と入社日を合意しておきましょう。転職先は「できるだけ早い入社」を求めることが一般的で、どうしても後ろ倒しできないケースも想定されます。事前に転職先と入社日の合意をとり、そこから逆算して退職日を決めることが大切です。

入社日が遅くなったことで内定取消になることも

転職先にとって、入社時期も選考の合否を決めるポイントの一つになり得ます。事前に合意した入社予定日に入社できない場合、最悪のパターンでは、内定取り消しという事態も想定されます。そのため、入社予定日は絶対なのか、相談可能なのか、相談可能なのだとしたら猶予はいつまでか、を明確に確認しておくべきです。「『少しくらい』遅れても大丈夫です」などと曖昧にしないことが大切です。

最も避けるべきは、退職交渉が思うようにいかず、入社日が遅れることが確定した時点で転職先に相談することです。退職交渉開始後に内定取り消しという事態にはならないように注意しましょう。

離職期間ができると社会保険の切り替えが必要なことも

退職から入社までに離職期間ができてしまうと、国民年金の切り替え手続きや、国民健康保険への加入の手続きを自分で行わなければなりません。離職期間がない場合は、転職先の会社が切り替え手続きを行います。ここでポイントになるのは、月末時点で在籍しているかどうかです。離職状態で月末を迎えてしまう場合は注意しましょう。

転職先の入社日のルールも確認する(毎月1日のみという場合も)

会社によっては、入社日は毎月特定の日のみということもあります。例えば毎月1日に入社式をするので、月中での入社は不可という場合です。ほかにも、給与計算を煩雑化させないために、毎月1日もしくは給与締め日の翌日(例えば16日、21日など)に入社日してほしいということもあります。

転居が必要な場合はスケジュールも綿密に

Uターンなど転居を伴う転職の場合は、住まいの退去や入居、引っ越しといったスケジュールにも気をつけましょう。これを考慮せずに入社日を決めてしまうと、入社後しばらくの間は実家やホテル暮らし、元の住まいと何往復もする羽目になってしまうこともあり得ます。

20代、特に独身時代であれば、考慮するのは自分の仕事のスケジュールだけで良かったかもしれません。しかし30代は、場合により結婚や出産といったプライベートの変化が起こりやすい時期でもあります。そのため、仕事以外のライフイベントも考慮したうえで退職日までの様々なスケジュールを組み立てる必要が出てくるでしょう。転居が必要になる場合も自分一人ではなく、配偶者と綿密に相談して決定する必要も出てくるため、早めの準備が大切です。

退職交渉STEP②退職交渉の開始

転職先への入社日から逆算して現職企業の退職日を決めたら、さっそく退職交渉を進めましょう。言い出しにくかったり、繁忙期だからと後回しにしたりということは、結果的に現職企業に対して不誠実な対応となってしまいます。現職企業としては、社員が退職するということは、外部採用、社内異動、業務担当変更、顧客や業務の引き継ぎなどの必要性に迫られます。そのためにもできる限り早く退職の旨を伝えることが大切です。

転職(退職)の意思が決まったら、すぐに退職交渉を

転職(退職)の意思が決まったら、その翌朝には直属の上司に「10分だけ時間をください」等と伝えて時間を設けてもらいましょう。最近は出社せずにリモートで仕事をしている人も多くなっています。必ずしも顔を合わせて伝えることにこだわる必要はありません。対面が難しければ、オンラインや電話であっても、早く退職の旨を伝え、退職交渉をスタートさせることが現職企業のためです。

退職理由で「会社への批判・不満」はNG

もう退職する会社だからと、批判をしたり不満をぶつけたりすることは避けましょう。自社のことを悪く言われた相手が感情的になることも考えられます。感情的になってしまうと退職交渉のトラブルに繋がりやすくなります。お互いに冷静に進められるように努めるべきです。

また会社への批判や不満は、相手にとって絶好の引き留めの材料を与えてしまうことにもなります。相手に「それが解消されれば会社に残る可能性がある」というメッセージを与えないよう、批判や不満はグッと押し殺しておくことが無難でしょう。

「交渉」ではなく「報告」のスタンスで、退職意思を伝える

一般的に退職「交渉」と言われることが多いですが、退職「報告」という心構えを持ちましょう。法律上は、労働者側からの一方的な退職の申入れによって退職は可能であり、現職企業の合意が求められるものではありません。「交渉」をするというスタンスではなく、自分の退職意思を伝える「報告」という気持ちで臨みましょう。「退職を考えています」というような言葉では、上司は「相談をされている」と捉えてしまうかもしれません。「○月○日付で退職します」と明確に自分の意思を伝えることが退職交渉において大切です。

30代からは自分の専門性が見えてくる時期でもあります。場合によっては「自分しかこの業務に精通していない」という状況下にあり、現職企業から辞められては業務が回らなくなると強い引き留めを受ける可能性もあります。そうならないように後進を育成したり、業務をマニュアル化したりと備えておくことが大切です。

確かに伝えたという「履歴」を残す

口頭だけで伝えた場合、履歴がなく記憶のみに頼ってしまうことになります。現職企業から「聞いてない」と言われてしまうと、それ以上の反論が難しくなってしまいます。そのため、口頭で伝えるとともに、できれば「退職願」を提出するか、少なくとも履歴を残すことを心掛けましょう。退職届は会社によって提出するタイミングもありますから、口頭での報告後に、あらためてメールも送っておくと安心です。その際、最低限、以下の3点は明記しておくようにしてください。

  1. 退職する旨
  2. 退職を申し出た日
  3. 退職日

感謝の気持ちを伝える

これまで「報告」「履歴」とドライで事務的な印象を持たれてしまったかもしれませんが、しっかりと感謝の気持ちを伝えることも大切です。何らかの事情や思いがあって退職することになったものの、最後は感謝の気持ちを持ちたいものです。ビジネスパーソンは人的ネットワークも非常に大切な要素であり、退職後も何らかのつながりを持ち続けるケースも多くあります。残された時間で引き継ぎも責任をもって行う旨を伝えて、退職後も関係性を維持できるように努めましょう

伝えただけで終わらない

退職交渉は直属の上司に報告した後、人事部や社長・役員といった上層部へと手続が進んでいくことが一般的です。直属の上司に報告してそれで終わりと思わずに、手続の進捗状況は自分から確認していく姿勢を持つようにしましょう。

退職交渉STEP③引き継ぎの開始

退職までの期間はこれまで以上に頑張るという気持ちで仕事にあたりましょう。素晴らしいビジネスパーソンほど、「立つ鳥跡を濁さず」の姿勢をもっているものです。もう退職するからと引継ぎに手を抜いてはいけません。

引き継ぎは絶対に手を抜かない

自分が会社を去った後、「○○さんは引き継ぎをしっかりとやってくれた」と言われるくらいに、最後まで手を抜かずに引き継ぎをやり遂げましょう。これまでの仕事以上に力を入れて引き継ぎを行うくらいの気持ちがあれば、それが現職企業にも必ず伝わるものです。

できれば文書を作成して引き継ぐ

引き継ぎというと、後任者とマンツーマンで行うイメージがあるかも知れませんが、必ずしもそれだけではありません。できれば、引き継ぎ事項を「文書」として残すようにしましょう。その業務分野についての最低限の知識がある人であれば、その文書を読めば問題なく職務遂行できるものが理想です。

退職交渉STEP④退職日を迎える

引き継ぎも終わり、無事に退職日を迎えられたのであれば、あらためてこれまでの感謝の気持ちを伝えると良いでしょう。有給休暇が残っている場合や退職日が休日の場合は、退職日≠最終出社日となることもあります。最終出社日までに、きちんと挨拶を済ませるようにしましょう。

お世話になった人たちへの挨拶をする

退職する前に社内外のお世話になった人たちへ挨拶をしておくことをお勧めします。そのとき、必ず事前に上司へ「退職の挨拶をして良いか」の確認をしましょう。退職は会社にとっては人事であり、人事が発表される前に他者に情報を漏らしてしまえばトラブルに発展する可能性があります。

身のまわりは綺麗に片づけ、私物は残さないように

自分のデスクをきれいにして、私物はきちんと自宅に持ち帰り、会社に残さないようにしましょう。また、会社から貸与されているものは返却する必要があります。PCやスマホ、カードキーはもちろん、ペンやファイルといった小物であっても、勝手に持ち帰ることのないようにしましょう。

退職交渉Q&A

ここでは、退職交渉に関して皆さんが疑問に思うであろうことをQ&A形式でお答えしていきます。

Q1:言い出すタイミングが掴めない場合はどうするべきか
Q2:退職は誰に伝えるべきか
Q3:退職はメールで伝えてもよいか
Q4:上司が聞く耳をもってくれない場合はどうするべきか
Q5:「後任が採用できないから」と引き留めにあった場合はどうするべきか
Q6:「昇給・昇格をさせるから」と引き留めにあった場合はどうするべきか
Q7:「地元に異動させる/リモートワークを許可するから」と引き留めにあった場合はどうするべきか
Q8:引き留めを受けて気持ちが揺らいだ場合はどうするべきか
Q9:転職先を聞かれた場合は答えるべきか
Q10:「退職願」と「退職届」は、いつ提出すべきか
Q11:競業避止の誓約書にサインを求められた場合はどうするべきか
Q12:有給休暇をすべて使い切ってもよいか
Q13:賞与を受け取った後に退職交渉を始めても問題ないか
Q14:「円満退職」できないと、どのようなデメリットがあるか
Q15:「退職代行サービス」は利用してもよいか
Q16:退職交渉が上手くいかない場合はどのように対処すべきか
Q17:退職時にもらうべき書類は何があるか

言い出すタイミングが掴めない場合はどうするべきか
これまでお世話になった会社ですから、言い出しにくいという気持ちはよく分かります。しかし退職交渉は言い出すタイミングが遅くなればなるほど、相手に迷惑をかけてしまうことになります。始業時間になったら、一度深呼吸して直属の上司に「10分だけ時間をください」と伝えましょう。この上司とのアポイントを得る連絡手段は、対面ではなく電話やメール等でも問題ありません。
退職は誰に伝えるべきか
「直属の上司」です。会社の承認・報告のプロセスは必ず守りましょう。直属の上司を飛ばして、人事部や社長・役員などに伝えてしまうと、直属の上司の顔がつぶれてしまうばかりか、場合によっては感情的な話に発展してしまう可能性があります。まずは直属の上司に伝えて、そこでどうしても退職交渉の話が進まないときには、その上の上司もしくは人事部に伝えると良いでしょう。
退職はメールで伝えてもよいか
退職交渉のプロセスを、退職報告するためのアポイントを取るタイミングと、実際に退職報告するタイミングに分けて考えましょう。前者であればメールでも問題ありません。しかし後者については、できる限りメールで伝えることは避けた方が良いでしょう。退職報告の第一報をメールでしてしまうと、どうしても事務的に捉えられてしまいます。「こういうことは直接言うのが礼儀だろう」と相手の感情を刺激することにもなりかねません。退職報告の手段は、対面>オンライン>電話>メールで優先順位をつけて、スケジュールとの兼ね合いで選択しましょう。対面で伝えたいけれど相手が出張中で直接会える時間が取れないという場合は、オンラインや電話で伝えてしまった方がよいでしょう。メールは最終手段と考えることをお勧めします。
上司が聞く耳を持ってくれない場合はどうするべきか
退職交渉に上司が聞く耳を持ってくれないというケースは頻繁にとは言わないまでも、よく起こります。その場合には、そのさらに上の上司や人事部に伝えましょう。それでも話が進まず、社内の誰に伝えてもそれ以上の進展が見込めない場合には、社会保険労務士などの専門家に相談することも手段のひとつです。ここまで至ってしまうと、おそらく会社もあなたも双方で良い印象は持っていないはずです。あなたの大切なキャリア・人生ですから、長くダラダラと付き合うよりは専門家にアドバイスをもらい、きっぱりお別れしましょう。
「後任が採用できないから」と引き留めにあった場合はどうするべきか
状況によっては、なかなか引き継ぐべき後任者が現れないケースも想定されます。またそれを理由として退職交渉が行き詰まってしまうこともあります。そうした場合には、引き継ぎ事項を「文書」として残しましょう。引き継ぎは必ずしも面と向かって行う必要はありません。引き継ぎの相手が現れない場合には、「文書」が有効です。その業務分野についての最低限の知識がある人であれば、その文書を読めば問題なく職務遂行できるものが理想です。そうすることで、後任者との直接のやり取りがなくとも、引き継ぎは完了します。
「昇給・昇格をさせるから」と引き留めにあった場合はどうするべきか
企業にとっては、求人倍率が高くなり売り手市場になればなるほど、採用と同様に社員を退職させないことも重要になってきます。当然ながら昇給・昇格などを引き合いに出して、退職交渉に応じず慰留に努めてくることでしょう。まずあなたの退職理由が役職や給与でないのなら、何も迷うことはないはずです。一方で、役職や給与が原因で退職を申し出ていた場合には迷うかもしれません。しかし、このタイミングになってはじめて昇給・昇格を持ち出す会社は正直信用なりません。会社に残ったとしても、他のことにも不満を持ちつつ、振り回されながら仕事を続けていくことになります。きっぱりと慰留を断りましょう。
「地元に異動させる/リモートワークを許可するから」と引き留めにあった場合はどうするべきか
地元へのUターンを理由に退職(転職)する人も増えています。それを上司に伝えたところ、「地元に異動させる/リモートワークを許可するから」と引き留められるケースがあります。一見すると退職する理由がなくなり、現職企業に留まった方が良いのではと考えるかもしれません。しかし、これにはリスクも伴います。

①地元へ異動するということは、将来はまた別の地域への異動も当然あり得えます。就業規則によりますが、将来の異動を回避するためには地域限定職といった転勤がない雇用契約に変更する必要性も考慮しておきましょう。その場合は年収が下がる、将来のキャリアが限定される、という可能性があります。

②リモートワークは昨今導入する企業が増えていますが、それを就業規則に明記している会社はまだそれほど多くありません。状況に応じて柔軟に変更できる余地を持たせている会社が多数です。そのため、リモートワークが認められなくなった場合には、すでに転居した地元に残るためには退職せざるを得ないということも考えられます。

 
引き留めを受けて気持ちが揺らいだ場合はどうするべきか
原点に帰って、なぜ退職を決意したのか、もう一度気持ちを強く持つべきです。退職を決意することはそう簡単なことではなく、考え悩みぬいての決断だったはずです。その決意をもう一度固めましょう。
転職先を聞かれた場合は答えるべきか
転職先が決まっていることは伝えて問題ありませんが、転職先の社名は伝えない方が無難です。最悪の場合、転職を妨害されるというケースも考えられます。余計なリスクは負わないためにも、退職交渉の過程で、転職先の社名を伝えることは避けましょう。なお、円満退職していることが前提ですが、転職後しばらくしてから、「いま○○社でお世話になっています」と挨拶に行くことは問題ありません。ただし競合企業に転職した場合など、相手が快く思わないことが想定されるときは止めておきましょう。
「退職願」と「退職届」は、いつ提出すべきか
会社ごとの就業規則に基づき提出しましょう。画一的にこうしなければいけないという決まりはありません。一般的には、「退職願」は退職交渉プロセスにおいて、自分の退職意思を正式に文書として示すという意味合いがあります。自分の意思が強いということを相手に伝える手段でもあります。一方で、「退職届」は会社が社員の退職手続を進めるうえでエビデンスとして残しておくために必要となる場合が多いです。退職交渉においては、自分から「退職願」を提出し、その後、会社から求められたら「退職届」を提出するという流れがスタンダードです。
競業避止の誓約書にサインを求められた場合はどうするべきか
退職交渉の過程で、見慣れない競業避止の誓約書へのサインを求められると戸惑ってしまう方もいます。憲法で職業選択の自由が保障されている一方で、会社の立場としては独自の技術やノウハウなどを競業企業に持ち出すことで営業上の利益を失うことは避けたいと考えます。そこで入社時や退職時に競業避止の誓約書に署名を求める会社があるのです。競業避止の誓約書の法的効力が認められる範囲は限定的ではありますが、不安な方は弁護士に相談することをお勧めします。
有給休暇をすべて使い切ってもよいか
有給休暇は労働者の権利ですから、使えるものは使いたいと考えるのが普通ではないでしょうか。最終的には、転職先への入社日との兼ね合いで判断しましょう。有給休暇は現職企業との労働契約に基づくものであって、転職先には関係のないものです。転職先から早期の入社を求めてられている場合、それを受け入れるか否かは個人の判断となります。入社後に気持ちよく仕事をするためにも、お互いの事情を斟酌して歩み寄る姿勢を持ち、過度に有給休暇を使い切ることに固執しないことをお勧めします。
 
賞与を受け取った後に退職交渉を始めても問題ないか
退職前の最後の賞与がもらえるかどうかは重要です。人によっては百万円単位の金額になることもあるでしょう。これも転職先から求められている入社日との兼ね合いで、個人の判断に基づいて決定することになります。なお退職することが分かっていても、賞与支給日に在籍していれば、基本的に賞与は受け取れます。ただし、賞与支給日前に退職の旨を伝えた場合、賞与を減額される可能性はあると思っておいた方が良いでしょう(就業規則等をご確認ください)。賞与を満額受け取るために、退職交渉の開始時期を遅らせ、無理な退職スケジュールを現職企業に押し通すのではなく、あくまで就業規則に則った退職を心がけましょう。
「円満退職」できないと、どのようなデメリットがあるか
退職交渉はできる限り円満に進めることをお勧めしています。しかし円満退職に至らないということもあるでしょう。その場合に考えられるデメリットとしては、退職後に現職企業の社員との人的ネットワークが活用しにくいということと、将来リファレンスチェックを求められたときに困ることが考えられます。リファレンスチェックとは外資企業で多く用いられるもので、応募者の許可を得たうえで、(応募者の過去の)在籍企業の上司等に、応募者の経歴や人柄の確認をすることです。円満退職ができなかった場合、リファレンスチェックに応じてもらえない、もしくはネガティブな評価をされてしまうというリスクがあります。
「退職代行サービス」は利用してもよいか
退職交渉を退職代行サービス業者に依頼するということがメディアで話題になりました。しかし、利用することはできる限り避けることをお勧めします。円満退職とは対極にある退職方法であり、上述したようなデメリットが生じます。なお、弁護士ではない退職代行サービス業者は、相手方との交渉はできません。給与支払、有給消化、労災認定など交渉を伴う場合は、弁護士に相談する必要があることも覚えておきましょう。
退職交渉が上手くいかない場合はどのように対処すべきか
法律上は、労働者側からの一方的な退職の申入れによって退職は可能であり、現職企業の合意が求められるものではありません。しかし、会社から合意が得られないなかで、自分だけの判断で強引に退職を進めてしまうことも避けたいものです。その場合には、適切な専門家(弁護士や社会保険労務士)に相談して退職交渉を進めることをお勧めします。
退職時にもらうべき書類は何があるか
退職時にもらう必要がある書類は、以下の通りです。

(A) 雇用保険被保険者証
雇用保険の加入者であることを証明するもので、一般的には会社で保管されています。転職先への入社時に提出する必要がありますので必ずもらっておきましょう。
(B) 年金手帳
20歳以上の方に一人一冊交付されているもので、個人が手元で管理している場合と、会社で保管している場合があります。手元にない場合には、必ず会社から受け取りましょう。
(C) 源泉徴収票
年の途中で転職した場合には、転職先で年末調整をしてもらう必要があります(個人で確定申告をする場合を除く)。転職先に提出する必要がありますので、必ずもらっておきましょう。
(D) 離職票(雇用保険被保険者離職票)
ハローワークで失業保険を申請する際に必要となる書類です。離職票(雇用保険被保険者離職票)は、退職後でないと発行してもらえませんので、一般的には郵送で自宅に届けられることが多いです。退職時点ですでに転職先が決まっている場合は不要ですが、まだ決まっていない場合には必ず受け取りましょう。

退職交渉の進め方を理解し円満退職を目指そう

退職交渉に不安はつきものです。しかし、事前に正しい退職交渉の進め方をマスターしておけば不安は最小限に抑えられます。また、転職活動の最終STEPである退職交渉をスムーズに終わらせることが、転職先で輝かしいキャリアを築いていくことの第一歩となります。皆さんが自らの意思で退職を決意し、新たなキャリアを目指された決断を心から応援しています。

あわせて読みたい

転職活動って、何から始めればよいのでしょう?どういったステップがあって、どのような準備が必要なのでしょうか? ここでは、転職活動のはじまりからおわりまで、4つのステップに分けて説明していきます。納得のいく転職を実現するため、計画的に[…]

あわせて読みたい

転職活動が順調に進み、希望する企業から内定が得られたら、最後は意思決定(内定承諾)が求められます。 私はこれまで多くの人の転職支援をしてきましたが、そのなかで、迷いなく意思決定ができる人とそうでない人がいました。どちらも「第一希望の[…]

\ 個別キャリア相談会 開催中!/

ご予約はこちら