仕事をしていれば、ふいに「転職」の二文字が頭に浮かぶこともあるでしょう。転職したほうがいいのか、このまま今の仕事を続けるべきか。「決めるのは自分」とわかっていても、決断することは難しいものです。
今回はよくある転職理由ごとに、考えるポイントを紹介します。
転職したほうがいい人としないほうがいい人がいる
仕事をしている人ならば、転職をしたほうがいいのか、今の環境に留まるべきか、悩むときがあるものです。悩んでいるうちに数年が経過した……という人も少なくありません。一人で悶々と考えているうちは答えが出ないでしょう。
一昔前とは違い、いまでは転職のハードルは低くなりましたが、それでも人生における大きなターニングポイントです。さらに自分だけでなく家族など周囲の人にも影響を与えるため、いざ転職する際は冷静な判断が必要になります。
転職を考えた理由を整理し、それを解決する手段として転職がベストなのかを考えることが大切です。
転職を考えた理由を整理する
転職するかどうか迷っているときは、その理由を整理することから始めます。
「今の仕事にどのような不満や不足を感じているのか」を明確にしてください。現状に不満や不足を感じていない場合は、何を改善・解決・達成したくて転職したいと考え始めたのか、思い出してください。
- 家族が増え今後の生活を考えると給与が足りないと思うようになった
- 自分が目指すキャリアに変化があり今の会社で成し遂げられるか疑問を抱いた
- 会社が合併し組織や仕事内容が大きく変わった
など、理由が必ずあるものです。
紙に書き出すなどして、転職を検討するに至った気持ちや考えを整理するとよいでしょう。
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転職する?しない?転職理由ごとに解説
転職理由が整理できたら、それを解決する手段として転職が適切なのかどうかを考えていきます。
よくある転職理由ごとに、考えるポイントを紹介しますので、自分の転職理由と照らし合わせてみましょう。
ケース①給与に不満がある
転職理由で多いのは「給与が低い/昇給が見込めない」というものです。
まずは、自分がなぜその給与額なのかを考えてみてください。会社の給与制度や評価制度を再確認してもよいでしょう。今の仕事を頑張ることで改善できる要因であれば、転職せずに現職に留まることをおすすめします。年功序列が廃れつつある現在でも、会社に長く勤めるほど給与は上がっていくことが一般的です。
しかし、自分の頑張りだけでは改善できないことが要因であれば、転職を前向きに検討したほうがよいかもしれません。今の仕事について、下記2点を振り返ってみましょう。
(1) 会社が求める成果を出しているか
ここで注意してほしいのは、いくら仕事を頑張っても、会社の方針や求める成果に合わないと、高い評価を受けるのは難しいということです。まずは会社が期待する以上の成果を出すことに専念してみましょう。
(2) 適正な評価を受けていると感じるか
自分は一定の成果を出していると思う場合、その評価に納得感があるか考えてください。十分な成果を出しているのに見合う評価を得られていないと感じるのであれば、転職に踏み切るのもよいでしょう。
なお、成果と評価は自分自身の主観だけでなく、同業他社との比較など客観的に見ることを意識しましょう。
ケース②業界/会社の将来性に不安がある
業界全体の景気や会社の将来性に不安を感じて転職を検討するケースがあります。
業界の景況はしっかり把握しておきたいものです。コロナ禍における旅行業界のように、個人の頑張りだけではどうにもならないこともあります。異業種でも活かせる経験やスキルがあれば、それを武器に転職できる可能性が高いでしょう。転職先の企業からも「その業界なら転職しても仕方がない」と判断してもらえるため、選考がスムーズに進むことも期待できます。ただし、どの業界にも浮き沈みはありますから、その点には注意が必要です。
会社の将来性にも同じことがいえます。同じ業界の競合他社と比較して自社の状況はいかがでしょうか。好調な会社が多い業界なのに自社が苦戦している状況であれば、自分ひとりが頑張ってもすぐに待遇は改善しないでしょう。同業他社に転職してキャリアを積み上げることもひとつの選択肢になります。
ケース③仕事がつまらない、今後のキャリアに不安がある
「仕事がつまらない」「キャリアアップが見込めない」というのも転職理由としてよくあるケースです。この場合は、いきなり転職に踏み出す前に自分の仕事を見つめ直してください。
仕事の何がつまらないと感じるのか、キャリアの何が不安なのか。自分の気持ちを掘り下げていくと、転職以外の解決策が見えてくることがあります。例えば、現職で新しいプロジェクトに手を挙げたり、仕事の幅を広げる取り組みをしたり、といったことです。
やりたいことがある場合、現職を続けたまま副業でチャレンジするという選択肢もあるでしょう。自分ができること、やりたいことからキャリア構築のプランを再検討することも有効です。
アメリカの臨床心理学者ハーズバーグが提唱した「二要因理論」という考え方があります。人間の仕事における満足度において「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)は別のものであるという理論です。
動機付け要因とは「承認されること」「責任」「昇進」などで、これらが満たされると満足感を覚えますが、欠けていてもすぐに不満足を引き起こすものではありません。衛生要因とは「会社の政策と管理方式」「給与」「対人関係」などで、これらが不足すると不満足を覚えますが、満たしたからといって満足感につながるわけではありません。
転職理由を整理する際に、この二つの視点で今の仕事を見つめてみると、新たな気づきがあるかもしれません。
ケース④家庭の事情で転居することになった
結婚、出産、介護など家庭の事情で転居せざるを得ないときがあります。その場合、転職しなければならないと考える人が多いです。
しかし、本当はずっと今の環境で頑張りたいのに……と思っているならば、まずは会社に相談してみましょう。ここ数年でリモートワークが普及したため、「引っ越しに伴う退職を願い出たら会社からリモートワークを提案されたので、引っ越し後も仕事を続けることができた」という事例が増えています。現職を辞めたくないのなら、引っ越し先でも今の仕事を続けられるような方法を考えることをおすすめします。
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また、以前から仕事のことでモヤモヤしていたが、ライフイベントが引き金となって転職を本格的に考え始めたというケースも少なくありません。
そんなときは、何にモヤモヤを感じていたのかを整理しましょう。モヤモヤの原因が転職で解決できることであれば、よいきっかけができたことで、転職活動により意欲的に取り組めるかもしれません。
ケース⑤人間関係がうまくいかない
人間関係に悩みがあると辛いものです。この場合は、「辛い」という自分の気持ちを大事にしつつも、冷静な視点を忘れないようにしましょう。
他者と関わりをもって働くからには人間関係の悩みは避けて通れないものですが、異動や退職など、会社での人間関係には必ず終わりが来ます。あるいは、自分の言動を見直す、コミュニケーションを変えるといったことで改善できるかもしれません。
「人間関係にはモヤモヤするけど仕事内容や待遇には不満がない」という場合は、転職に踏み切る前に、極力ストレスを減らして今の仕事に打ち込む方法を考えることをおすすめします。
ただし、人間関係の問題が仕事に影響を及ぼしそうな場合は迷わず適切な人に相談してください。そのうえで、ひとつの解決策として転職を検討するとよいでしょう。
ケース⑥労務環境を改善したい
平日休みの仕事をしているが土日休みの仕事へ転職したい、残業が多い環境から抜け出したい、というように働き方を変えるために転職を検討する人もいます。
今の会社に勤め続けても、休日や労働時間といった労務環境が劇的に変わる可能性は低いでしょう。自分が望む働き方を実現するためには、転職が最善かもしれません。ただし、転職先の労務環境が必ずしも満足のいくものとは限りません。選考の段階でしっかり確認をとり、可能な限りリサーチをしたうえで転職先を選択しましょう。
転職したほうがいい人の特徴
ここまでお話ししたことから、転職したほうがいい人の特徴をまとめました。当てはまる人は転職活動に踏み切ってもよいでしょう。
- 解決に向けて考え、あるいは行動したうえで「転職したほうがいい」という結論に至っている
- 業界、企業、自分の経験、スキルなどをよく理解し客観的に説明できる
- 自分の頑張りだけでは改善できない理由で転職を検討している
- 転職することで、転職検討理由を改善できる/希望をかなえられる裏付けがある
転職しないほうがいい人の特徴
転職したほうがいい人とは反対に、転職をおすすめしない人の特徴をまとめました。
- 転職で何を改善・解決したいのか、明確になっていない
- 転職せずとも自分の頑張りで改善・解決できる可能性がある
- 転職理由を改善・解決する方法を考えていない、解決に向けた行動をしていない
- 冷静な判断ができる状態ではない、感情が昂っている
今の会社を冷静に見つめる方法として、「自分がいま無職だったら」と仮定し、「転職先(就職先)に今の会社(仕事)を選ぶか?」という問いを立てるのも有意義です。「今の会社(仕事)を選ぶ」と迷いなく答えられるなら、今の会社に留まることが自分のためになるでしょう。今の会社を選ぶか躊躇するなら、転職したほうがよいかもしれません。
後悔しない決断を
転職を検討する際は、現状の何が不満・不足か、解決したいことは何か、整理することから始めましょう。家族や友人など身近な人や、転職コンサルタントに相談することもおすすめです。
実際に転職するかどうかは大きな決断が必要になりますが、転職「活動」はノーリスクのため、実際に動きながら判断してもよいのです。どの選択をされるとしても、皆さんが納得のいく決断ができることを心から祈っています。