【労働時間編:労働条件通知書シリーズ】勘違いしやすいフレックス・変形労働時間制・裁量労働制も徹底解説

採用された企業での働き方をイメージするとき、労働時間の概念は必要不可欠です。業務開始は何時か、休憩はいつ取るのか、時間外労働はどのくらいか……など、特に転職の場合はこれまでと働き方が大きく変わる場合もあります。また、働く時間によっては自分だけでなく家族の生活も変わってくるため、事前に確認しておくことが重要です。

この記事では、労働条件通知書に記載すべき「労働時間」の項目について、フォーマットや記載例を参考にしながらポイントを解説していきます。

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労働条件通知書に書かれている「労働時間」項目

※参照:主要様式ダウンロードコーナー(厚生労働省)

始業・終業の時刻等

(1)始業時間・就業時間

就業規則などで定められた始業時刻・終業時刻が明記されています。

例えば、始業(9時00分)・就業(18時00分)であれば、就業時間は9時間になります。労働時間が8時間を超える場合、企業は休憩時間を1時間以上与えなければいけないため、実際に働く時間(=労働時間)は8時間になります。

・使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
・使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
・使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。


引用:法定の労働時間、休憩、休日(厚生労働省HP)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

法定の労働時間は1日8時間、週40時間と労働基準法で定められていますが、それに縛られない労働時間制度も届出をすることで認められます。その例を以下にご紹介します。

(2) 変形労働時間制

変形労働時間制は、労使協定または就業規則等において定めることにより、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができます。「変形労働時間制」には、(1)1ヶ月単位、(2)1年単位、(3)1週間単位のものがあります。

引用:法定の労働時間、休憩、休日(厚生労働省HP)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

具体的には下記の通りです。

  • 1ヶ月単位:1ヵ月以内の一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができる。
  • 1年単位:1ヶ月を越え1年以内の一定の期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができる。
  • 1週間単位:規模30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業において、労使協定により、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることができる。

引用:厚生労働省 (3)1ヵ月又は1年単位の変形労働時間制
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/week/970415-3.htm
参照:労働基準法 第32条の5・施行規則 第12条の5・施行規則 第12条の5第2項

繁忙期と閑散期があるような業種や職種で取り入れられることが多い制度です。仕事が忙しい時に集中して働き、そうでない時はプライベートに時間を使えるというメリットがあります。3ヶ月単位、6ヶ月単位の変形労働時間制を採用している企業もあります。

(3)フレックスタイム制

フレックスタイム制は、就業規則等により制度を導入することを定めた上で、労使協定により、一定期間(1ヶ月以内)を平均し1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、その期間における総労働時間を定めた場合に、その範囲内で始業・終業時刻・労働者がそれぞれ自主的に決定することができる制度です。

引用:法定の労働時間、休憩、休日(厚生労働省HP)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

フレックス(flex)とは「融通がきく、柔軟な」という意味です。フレックスタイム制はその意味の通り、従業員が始業・終業時間を自身で決めて働くことができる制度です。個人の裁量が大きいクリエイティブな業種や職種で取り入れられることが多いです。質の高い成果を出すことができれば、労働時間は自由でよいという制度なので、自己管理が求められます。

また、会議や複数人で共同作業する場合、全員がフレキシブルに働いていると予定が立てづらいという理由から、コアタイムを設定している企業もあります。コアタイムを設けるためには就業規則に明記し、労使協定で定める必要があります。

フレキシブルタイム:自由に出勤と退勤ができる時間帯のこと
コアタイム:必ず労働していなければいけない時間帯のこと
コアタイムに遅刻したらどうなる?

コアタイムが設定されている場合、その時間に遅れてしまうと遅刻となります。例えば、10時~15時がコアタイムの場合、11時に出社したら1時間の遅刻です。就業規則に定められていれば、遅刻した分の時間の賃金が控除されたり、減給処分を受けたりということがあります。

(4)事業場外みなし労働時間制

みなし労働時間制には、「事業場外みなし労働時間制」、「専門業務型裁量労働制」、「企画業務型裁量労働制」があります。
事業場外みなし労働時間制は、事業場外で労働する場合で労働時間の算定が困難な場合に、原則として所定労働時間労働したものとみなす制度です。


引用:法定の労働時間、休憩、休日(厚生労働省HP)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

営業職や添乗員など事業場外で働く職種の方は、企業側が労働時間を算定するのが難しい場合があります。その場合に導入されるケースが多い制度です。

みなし労働時間の設定は「業務の遂行に通常必要とされる時間」によって決められます。10時間必要な業務を8時間とみなすことはできません。また、事業場内で労働した場合にはみなし労働時間にいれることはできないため、事業場内における時間と、みなし労働時間制により算定される事業場外で業務に従事した時間を合計した時間が労働時間となります。

(5)裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、デザイナーやシステムエンジニアなど、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない19の業務について、実際の労働時間数とはかかわりなく、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。
企画業務型裁量労働制は、事業運営の企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない業務について、実際の労働時間数とはかかわりなく、労使委員会で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。


引用:法定の労働時間、休憩、休日(厚生労働省HP)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

専門業務型裁量労働制を適用できる職種は法律で定められています。

※専門業務型裁量労働制について詳しくはこちら:厚生労働省労働基準局監督課 専門業務型裁量労働制
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/index.html

また、企画業務型裁量労働制も導入できる事業所にはいくつか条件があります。専門業務型裁量労働制よりも企画業務型裁量労働制のほうが厳格な手続きが必要になります。「対象事業場」で「対象業務」に「対象労働者」を就かせた時に、現実の労働時間にかかわらず、その事業場における労使委員会で決議した時間を労働したものとみなすことができます。

※企画業務型裁量労働制について詳しくはこちら:厚生労働省労働基準局監督課 規格型業務型裁量労働制https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/kikaku/

休憩時間

企業は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることが義務付けられています。

また、休憩は労働時間の途中で取る必要があります。9時から17時まで休まず働き、17時から18時まで休憩をして退勤するといった場合は、途中で休憩を取っていないため法律違反となります。

時間外労働の有無

企業が労働者に時間外労働をさせるためには、労使協定(36協定)を結び所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。また、常時見やすい場所に掲示する、書面で交付する、全員がアクセスできる共有フォルダに保存しておくなど、労働者全員へ周知する義務があります。

時間外労働協定(36協定)とは
労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定において、時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められます。この労使協定を「時間外労働協定」といいます。なお、時間外労働時間には限度が設けられています。
※時間外労働協定は、労働基準法第36条に定めがあることから、一般に「36(サブロク)協定」とも呼ばれています。


引用:法定の労働時間、休憩、休日(厚生労働省HP)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/index.html

おわりに

ここまで、労働条件通知書の労働時間についての項目を解説してきました。労働時間は生活に直結する項目です。労働条件通知書の内容をしっかりと確認し、不明点は事前に確認をすることで、入社後のギャップを解消するようにしましょう。

リージョンズでは、希望する働き方や制度についても丁寧にヒアリングし、転職について個別具体的なアドバイスを行っています。北海道・宮城・栃木・茨城での転職をお考えの方は、ぜひご相談ください。

※本記事は2023年2月10日現在の情報をもとに作成しています。可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、必ずしもその内容の正確性および完全性を保証するものではございませんので予めご了承ください。

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